水谷龍二

 松永玲子さんとは今回が初仕事(「ストロベリーハウス」)だが、僕にとってはやりやすい女優である。何がやりやすいかと言えば、芝居が的確で頭がいいこと、ダメを出しても一発で理解してくれる。余計なことは一切言わず、黙々と演技者に徹してくれる。そういう役者はやっぱりいい。飲み屋においても意外とおとなしい。もっと親しくなれば別なんだろうが、どちらかといえば聞き役で、こちらはつい言わなくてもいいことまで話してしまう。おじさんの扱いもなかなかうまい。今回の芝居で松永さんとでんでんは恋人同志なのだが、でんでんが本気で松永さんに惚れてしまった。それはそれで悪いことではないのだが、稽古中毎日酒に誘われてはたまらない。稽古も終盤のある飲み会で松永さんはサラリとでんでんに言った。
「毎日飲みに行こうっていうのはやめてください」
でんでんにとってはちょっとキツイ一言だったが、松永さんらしいと思った。みんながいる前できっちり牽制球を投げる。翌日の稽古で二人の芝居がガタガタになったかといえば逆で、なかなかよかった。松永さんはほんとに頭がいい。しかし、それだけではいい女優になれない。実はまだまだ足りない。
 僕は昔から喜劇が好きで、好きな役者も喜劇畑の役者が多い。男優は数え上げれば切りがないが、女優は少ない。ミヤコ蝶々、若水ヤイ子、菅井きん、市原悦子、樹々希林、若いところで片桐はいり。はいりさんとは来年早々、芝居をやることになった。(「乙女の祈り」共演・光浦靖子、山田花子)松永さんにはぜひミヤコ蝶々を継いでもらいたい。技術的なことはもういい。もっとほしいのは人間的な味である。滲み出るおかしみである。そういえばミヤコ蝶々は男でさんざん苦労した人だった。
松永さんとはこれからも一緒に仕事をしていきたいが、まずは最初の作品「ストロベリーハウス」、皆さんぜひ観にいらして下さい。

水谷龍二

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