山名宏和

[マツナガさんの発言(思い出し順)]

『そうなの?』
マツナガさんの口癖である。
聞いていると日に何度も口にしている。
『そうなの?』
アガペーの時は、特によく聞かれた。
キッチュさんがもっともらしいことを言う。
その度にマツナガさんは言うのだ。
『そうなの?』と。
しかし、キッチュさんの言ったことの大半は嘘で、後で騙されたと悔しがるのだが、それでも、その30分後には、また言っている。
『そうなの?』
信じたいんだけど、どうしても猜疑心が混じってしまうマツナガさんの『そうなの?』には、騙され続けた者ならではの微妙な味わいがある
そう、意外と騙され続けてきたのだ。

[D/J]の時は、即興クイズ大会が流行った。
みんなが自分のくだらぬ知識の粋を尽くして、アドリブでクイズを出しあう。出題者は主にキッチュさんと大王の2人。マツナガさんは極めて正解率の低い解答者だった。
それはさておき。
そんな流れを受けて、公演が終わってからしばらく経ったある時、僕はこんな問題をメールで送った。
[労働省の職種区分表には『ひるつけ人』という職種があります。これは一体、どんな仕事なんでしょうか。
正解したらプリンを差し上げます]
甘い物は苦手なマツナガさんだが、プリンは好物なのだ。
翌日、マツナガさんからこんな返事が返ってきた。
『分かりません。でもプリン』
でもって。
賞品という概念を根本から覆す発言。
しかし、そこにはマツナガさんの生き方の指針が滲み出てる気がする。

TOKYO FMで[サタデーウェイティングバー]という番組の構成をやっていて、時々、その中のコント部分にマツナガさんに出演してもらうことがある。
先日、その収録があった時のこと。
実は収録の後、一緒に故林さんの舞台を見に行くことになっていたのだが、収録から開演までのわずか1、2時間の間にマツナガさんは取材の仕事を入れていた。取材場所が劇場のそばだったので、僕も近くまで一緒に行ったのだが、途中でマツナガさんは、取材に来るライターさんに電話を入れた。初対面のライターさんが、自分のことを分からなかったらどうしようと思って、電話したらしい。細かい気遣いである。しかし、運悪く相手は留守電。そこでマツナガさんは留守電に、こう吹き込んでいた
『赤いカバンを持ってます。それから近未来っぽい時計をしています』
近未来っぽい時計って。
第一、時計を目印にしてどうする。いちいち手元をのぞけって言うのか。まあ、確かに赤いカバンは目印になるが、待ち合わせ場所を喫茶店。椅子の上にでも置かれたら、まったく目立たない。普通、そういう時は服装とか言うんじゃないの。
そう言いかけて止めた。
なぜなら服装で、自分のことを伝えるには、マツナガさんはこう留守電に吹き込まなければいけなかったからだ。
『縞模様のない、サバのようなTシャツを着ています』

[D/J]の公演期間中、マツナガさんは自分の鏡前に、週刊文春から破りとった[吉井レイ]の水着姿のグラビアを貼っていた。そのグラビアを初めて見た時、マツナガさんはこう言った。
『カッコいい』
深紅の大胆な水着は、確かにセクシーというより、カッコよかった。だから、マツナガさんの発言は間違っていない。しかし、その次のマツナガさんの発言は、楽屋に微妙な空気を漂わせた。
『これ衣装さんに見せて、こういうのにしてって言おう』
このグラビアについては、翌日、こんなことも言っている。
『お腹の辺りはイケるのよね』
何がどうイケるのかは、週刊文春のバックナンバーを探して、実際に自分の目で見て頂きたい。確か今年の6月末ぐらいの文春である。
同じ時、マツナガさんはこうも言っている。
『でも、ちょっと足はねえ』
足はちょっとどうなのか。これもグラビアを見て確認してほしい。
[D/J]が終わってからも、マツナガさんの深紅の水着に対する思いは消えなかったようだ。
久しぶりに会ったらしいナイロンの役者に、マツナガさんがこう話してるのを、ふと耳にした。
『とってもイイ水着を見つけたの』
それまで夏の公演の話をしていたのに。いきなりまたあの水着の話だ。しかも嬉しそうな表情で。どうやらマツナガさんは、舞台であの水着をるつもりだったらしい。そういえば、チラシに描かれた四つん這いの裸の女のイラストを見て、『あ、私これやりたい』って言ってたもの。
だが、実際はセーラー服姿だった。
確かホームページで、
『最近、腕とかタプタプしてきたので、水着じゃなくてよかった』的なことを書いておられたが、それはあくまで謙遜である。
[超老伝]の時、マツナガさんが言った印象的な発言がある。
『脱ぐと決まったら、なぜか痩せるんです』
まさに女優の鑑である。

そんなマツナガさんだが、かつてはボディコンだった。
嘘じゃない。本人から聞いたんだから。
これもまた[D/J]の時、たまたま2人でご飯を食べる時があって、その時、突然言われたのだ。
『私、昔、イケイケだったんです』
イケイケって。
それより、何だこのいきなりの告白は。笑ってほしいのか、ツッ込んで欲しいのか、それとも自分の青春をともに懐かしんでほしいのか。意図が分からない。呆然としている僕を横目に、マツナガさんは次々と恐ろしいことを言う。
『腰のところに金の鎖をつけてたんです』
『前髪も立てていたんです』
しかも、その姿で落語をやっていたのだ。
しかし、その2年後、マツナガさんはボディコンを脱ぎ、髪を切り、イロモノへの道を断念する。そこには色々な葛藤があったらしいが、聞きそびれてしまった。

最後に少しぐらいはイイ発言も書こう。
『難しいホンを書きましたね』
あるラジオコントを一読しての言葉である。
お仕事で来た[声優さん]には、この言葉はなかなか言えない。
別に本人は特別な意味で言ったわけじゃないと思うけど、この言葉を聞いた時、僕としては頼んでよかったと思ってしまったのだ。
それは何故かというと・・・・
書きたいのだが、この原稿を頼まれた時に『褒めないでくれ』と言われたので、これ以上は書けない。
そう、マツナガさんは褒められることに飽きているのだ

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